アコウの木

天草大江の西平椿公園の「石を抱くアコウの木」が今、SNSで話題となっている。
映画「天空の城 ラピュタ」に登場する木に似ているところから、
「ラピュタの木」と呼ばれ、パワースポットにもなっているそうだ。

今から10年ほど前、
私は、雑誌の取材のロケハンに同行して、天草を案内した。
その折、この「ラピュタの木」の横を歩いて、
その下に広がる海岸を撮影したらどうか、という提案をしようと思っていた。
ところが、一緒に歩いていたカメラマンが、突然、声を張り上げた。

「編集長!この木の特集版にしましょうよ。
これは凄い。生命力が尋常じゃあない。
木に籠る意志の力というか、大自然の怒涛のパワーが訴えかけてくる。
これは凄いですよお」
と言いながら、シャッターを切り始めた。

私は、それまでこの木を特別意識したことはなかったが、
言われてみると、
たしかになんらかの意志のようなものが感じられるような気もした。

結局、その雑誌で、
「ラピュタの木」が採用されることはなかったけれども、
あらためて、天草にとってアコウの木というのは、
特別な意味があるのだ、と思った。

昔、天草の港には、必ず立派なアコウの木が育っていた。
根強い力があるので、船を係留する目的で、植えられていたのだ。
だから、五足のくつの門の前にもアコウの木を植えて、永年の繁栄を祈願した。
今では、大いに成長し、よくお客様に
「この木は、初めて見ますが、なんという木ですか」と尋ねられる。

↑五足のくつのエントランスにあるアコウの木

 

春と秋の二回、葉が落ちてわずかな間、ピンクの花が咲くが、
すぐ散って、すぐに実がなる。そしてぐんぐん大きくなる。

そっと木肌に触れてみた。
指先から、「交歓」という普段使いなれない単語が伝わってきた。

共に生きる、貴重な存在だ。

 

 

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熊本県・天草市・下田温泉の旅館「五足のくつ」は、九州・熊本の雲仙天草国立公園にある、全室源泉かけ流し天然温泉の露天風呂付き離れの宿です。生ウニや伊勢エビやアワビなど、旬の地魚を使った懐石料理や天草産の天草大王・天草黒牛が人気。白秋らの紀行文「五足の靴」が名前の由来。

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